さんまのチカラ

今までの人生で辛いことがあった時に 少しでも笑いたくて憧れて追いかけてきた

笑いの根底にある覚悟と矜持

 

1994年のビートたけしのバイク事故における退院記者会見を見た時は驚愕した
顔面麻痺がまだ残る状態で目はあらぬ方向を向き口はゆがんだままだった
正直に言って申し訳ないが異形だった

それ以上に驚いたのはその見た目の異形より
芸人としての覚悟と矜持だ
肚(はら)の括り方が違う

自分だったら鏡をみて悲観し生きていく気力も萎えてしまう気がする
ましてや人前に堂々と出て撮影されたり喋ったりなんて出来る気がしない

常に死を見据えて生きることを語っていたたけしは身をもってその矜持を体現していた

ある意味お笑いとは対極の表現でお笑いに向き合っている

「治らなかったら、芸名を顔面マヒナスターズにします」
「頭に入っているボルトのせいで金属探知機に引っかかる」

自虐ネタで笑いを誘うたけしには心底震えた
こんな覚悟で芸人になるのなんて自分には無理と思った
もちろん芸人を目指したことなんて無いが
自分の人生にあてはめてみた時に
同じ態度と行動をとることができるだろうかと考えたら
自分の人生に対する覚悟に自信がなくなってしまった

たけしには生きることと死ぬことに対する覚悟と
芸人としての矜持が凄みとして醸し出ている

そして狂気を含んだ何かを見据えるような目だ
他の芸人や他の芸能人と比べて一線を画す何かがある

貧富の差、家庭環境の違い、
社会的立場の違い、様々な価値観を
おもちゃ箱をひっくり返すようにして語り
世間の一般常識に楔を打ち込み
権力者たちが蠢く社会を
笑いと毒舌を武器に突破してきた
その姿はなんともかっこいい

ビートたけしの弟子である東国原英夫が以前テレビで言っていた

たけし軍団のみんなと飲みに出かけてドンチャン騒ぎをして散々飲んで帰宅した後に、殿は物理学か宇宙かなにかの難しい本を読んで勉強しているんですよ。もう頭がおかしいんじゃないかと思いました(笑)」

勉強のためというより好奇心のエネルギーが半端ないのだろう

今の若い世代にはビートたけしの何が面白くて何が凄いのかは
あまりわからないだろうが
オールナイトニッポン』の喋りのスピードと頭の回転の速さは圧倒的だったし
オレたちひょうきん族
スーパージョッキー
天才・たけしの元気が出るテレビ!!
ビートたけしのスポーツ大将』
たけし・逸見の平成教育委員会
痛快なりゆき番組 風雲!たけし城』など
その後の他の番組のフォーマットとなるような企画を多数手がけている

発言や執筆も注目されるし、絵も描く
そして映画監督としては海外では「世界のキタノ」として評価されている
ビートたけしが芸人の地位を何段もステップアップさせたのは間違いない

僕はビートたけしのような毒舌系の笑いより
明石家さんまのシンプルな笑いのほうが好みなのだが
でも明石家さんまと同様に
ビートたけしのこともたまらなくかっこいいと思うのだ