さんまのチカラ

今までの人生で辛いことがあった時に 少しでも笑いたくて憧れて追いかけてきた

笑いの五輪書 ― 緊張と緩和

 

明石家さんまは周りのスタッフに

「お笑いの五輪書を書いたらどうですか?」と言われ

「書いたとしても一行で終わるで。残りのページは白紙や」

「笑いは緊張と緩和だけや。それさえあれば、あとはパターンの違いだけや」



ビートたけしは「笑いは落差」と表現していたと思う
フリがあってオチがある
その振り幅が大きいほど大きな笑いにつながる

厳粛な式典などで正装して気取った人がずっこければ面白いし
静かにしなければならない授業中ほど何かのきっかけで思い出し笑いを嚙みしめることもある
笑いをこらえなければならない時ほど笑いが込み上げてくるものだ

ダウンタウンの『笑ってはいけない』(日本テレビ)はそれを逆手にとった企画だ
僕はこのシリーズでは初期の
『笑ってはいけない温泉宿一泊二日の旅in湯河原』が一番笑ったな


五輪書』(ごりんのしょ)とは、剣豪『宮本武蔵』が著した兵法書
剣術技術書というより哲学や思想の指南書といった内容だ
ちゃんと読んだことないけど・・
空手の極真会館創始者大山倍達の本にはよく『五輪書』が引用されていた


そもそも笑いを文章で技術解説できるものかどうかわからない
声のトーンや発声法やリズム
間の取り方なんてコンマ何秒と数値化できるものでもない

声や間とリズム
表情や動作
その場にいる人たちの関係性
いろんなことが重なり合って沸き起こる空気感が何より重要だ
空気感も数値にできないし
言語化も難しい
ましてやセンスなんて解説できない


そもそも笑いのツボは人によって好みが違うので
絶対的な技術論を文章にしても無理がある

笑いに限らず芝居でもスポーツでも基本的技術は解説できてもその先は表現できない

一般社会でも「セールストークの極意」
「コミュニケーションを円滑にする会話術」などHOWTO本はたくさんあるが
あくまで基本セオリーが解説されているだけで実際に実践するのは難しい
上手い人を徹底的に観察して真似をしたほうが近道のような気がする
頭の中でのシミュレーションする会話と実際の会話は自分の思い通りのテンポや展開になるとは限らない

 


テレビやラジオでの演じる上手さ
舞台上のいわゆる「板の上」での上手さ
それぞれのノウハウがあるのだろうが
舞台での強さのほうが肝が据わっている気がする
その場の空気で柔軟に展開できる人が優れた芸人だ


舞台は客層によって空気が全然違う
老若男女バランスよく居る場合
高齢者ばかり
中年女性ばかり
若者ばかり
男性ばかり女性ばかりと
片寄った客層の時もある

どんな客層であっても
その場の空気に合わせて演じることができる芸人が一番力があるのだろう

 

演劇・漫才・コント
ミュージシャンでも
生のコンサートや舞台は
言いようのない感動があるみたいで
利益はあまりなくても
継続している芸能人は多い
生の観客の反応があり
自分の力を一番近くで測ることができる

目の前の観客から歓声や拍手を浴びることができる

逆につまらない内容であれば
反応が薄く下手をしたら途中退席やヤジなどもあり得る
それはそれで怖い
その怖さを乗り越えた分だけカタルシスがあるのだろう

そりゃそうだ
舞台やコンサートは招待券をもらって来る客もいるだろうが
ほとんどは自らチケットを買い求め
競争率が高いライブであれば
抽選で当選することを願い
当日を楽しみに
自ら会場に足を運ぶ

テレビと違い
客自らの能動的行動に支えられている

今の時代は本当に便利になった
こういったブログで情報発信も手軽になったし
情報収集も簡単になった

その代わり情報が多すぎて
ほとんどの情報が通り過ぎていくだけで
頭の中から零れ落ちていく

何十年も前に初めて行ったコンサートの心が震える熱狂的感動は今でも忘れてはいない
そして明石家さんまのコント舞台を初めて観た時の
テレビで見るより何倍も面白く
強烈なエネルギーを感じたことも
未だに心に残っている

自分が歳をとったせいもあるのかもしれないが
人は人との触れ合いで得た感動は生きていく上での最良の糧となる